社日とは、あまり耳慣れた言葉ではありませんが、一体何なのでしょうか。社日の「日」は、文字通り「日」ですよね。何の日なのか、或いはどういう日なのか、調べていきましょう。
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社日は暦日のひとつ
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社日は暦日、つまり暦で定めれた日のひとつです。もっと分かりやすく言えば、カレンダーに社日と称する日があるということです。
社日の「社」は神社の「社」です。ですから社日とは、神社にお詣りする日という意味です。何の神様にお詣りするのかと言えば、それは土の神である産土神です。その土地の神に、その地が豊かな実りを産み出すことを祈る行事をする日です。
社日の行事は戊の日に行われます。なぜならば戊は土と密接に関係しているからです。つちのえは土の兄とも書きます。兄とは陰陽の陽を表すとされていて、その辺りから土の霊力を祭る日として選ばれたものと思われます。
社日には春の社日と秋の社日のふたつがある
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社日に産土神を祀った神社にお詣りするのは、五穀豊穣の祈願のためでしたが、頼みっ放しで後は知らぬ存ぜぬでは、逆に天罰が下ります。その結果については、きちんと神様に奉告しに行かなければなりません。
それ故社日には、春の社日と秋の社日のふたつがあります。春は豊作祈願のためで、春社とも言います。秋は収穫感謝のためで、秋社とも言います。
春社は春分に最も近い戊の日、秋社は秋分に最も近い戊の日です。但し、戊と戊の丁度中間に春分日・秋分日が来る場合、つまり春分日・秋分日が癸の日となる場合は、ちょっと困ります。なぜならば、この日の前後の戊の日がどちらも5番目になってしまうので、どちらにするか問題が発生するからです。
社日の行事は地方色が強いので、一概にどちらとは言えないのですが、公式な暦として広く普及しているものでは、春分・秋分の瞬間が午前中ならば前の戊の日、午後ならば後の戊の日とするのが一般的です。
では具体的にはいつなのかと言えば、春分日・秋分日とも毎年同じ日とは限らない上に、戊は十干のひとつで、十干の名が表す通り十あるうちのひとつですから、さらにぶれてしまってなかなか難しいのですが、春分日・秋分日を挟んで前後5日程度の間の一日になります。
社日は九つあるとされる雑節のみっつ目である
雑節は、季節の移り変わりをより適確に掴むために設けられた、特別な暦日です。二十四節気や五節供のように中国から伝わったものではなく、日本人の生活文化から生まれた日本独自のものです。
一般に雑節と呼ばれるものは九つあって、社日はどの資料にも、節分、彼岸に次ぐ3番目のものとして記載されています。
但しそれは、一年のうちに3番目に訪れる雑節の日と言う意味ではなく、単に説明の記述を並べるうえでの順番に過ぎません。なぜ実際に訪れる順番と、説明の順番が異なるのかは定かではありませんが、そこのところは誤解のないようにお願いします。
多種多様な社日の行事
社日は土地の神を祀るので、この日は農作業のように、土をいじったり、掘り起こしたりする行為を忌む風習が各地に見られます。土いじりは神様の歩行を妨げるとか、土掘りは神の頭を掘ることだとか考えられたからです。
長野県小県郡では土地即ち田の神様が、春に山から里へ降り、秋になると山へと帰っていくと考えられているため、社日には餅をついて祝います。
福岡県嘉穂郡では、社日には海辺へ出て清い海砂を竹かごに入れて持ち帰り、玄関先に下げて家を清める、お潮井とりという風習があります。
京都の旧中郡では、朝早くから東に位置する寺やお地蔵さまにお参りして日の出を向かえ、その後順次に南を廻って西へ行き、日の入りを見送るという風習がありました。
その他にも、社日に鳥居のある神社を七社参詣するとボケ防止や通風除けになるとか、春社にのむ日本酒は治聾酒となって耳が遠くなるのを防ぐとか、ちょっと迷信めいた話を含めれば、枚挙に暇がありません。
おわりに
彼岸と社日は時期的に重なり合うこともあるせいか、最近では彼岸行事は知っていても、社日はとなると、農業関係者以外では、すっかり影の薄い存在と化しているのかも知れません。
しかし、地元に密着した社日には地元の神社の祭が催されることが多かったりします。或いは春や秋に限って何気なく行われているその土地の風習などは、実は社日と大いに関係があったりします。
これを機会に、ご近所の神社に立ち寄って、土地の守護神にお詣りしてみて下さい。さり気なくも新しい発見がきっとあるはずです。社日はまさに温故知新の日なのです。