山の日の由来は何?ハッピーマンデーでもない新しい祝日の正体とは?

8月11日山の日です。平成28(2016)年から始まった、一番新しい国民の祝日です。その前に新設されたのが平成8(1996)年施行の海の日ですから、丁度20年ぶりの新しい祝日ということになります。

海に対する山であり、海の日の次にできた山の日ですから、海の日と山の日は単純比較されがちですが、両者の間に祝日としての関連性は見出せません。

そもそも海の日というのは、海の記念日から発展した、出自も確かな日なのですが、山の日には確たる由来がありません。いわば、先に祝日ありきで、その定義付けは、極論すれば後から取って付けたようなものなのです。

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目次

山の日の由来

山の日は、平成26(2014)年5月30日公布の「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第43号)」によって制定され、同法律が平成28(2016)年1月1日に施行されたことにより祝日として誕生しました。

すべての祝日にはその法律において祝日たる所以を説明していて、それはもちろん山の日も例外ではありません。山の日の場合は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ための日として8月11日を祝日と定めています。

しかし8月11日自体に、山と結びつく特別な関連があった訳ではなく、この日が山の日であるべき明確な由来というものは、実は何もないのです。

ではどうして8月11日が山の日となったのでしょうか。それは、8月に祝日がなかったからです。6月にも祝日はありません。だから候補にはあがりました。7月の海の日の翌日ではどうかといった案もあったようです。

しかし最終的には8月になりました。8月にはお盆があり、慣習的に休みを取りますが、大企業などの夏季休暇は別として、お盆休みといえば、一般的には8月13日から15日までの3日間を指します。そことうまく絡めたかったのです。

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もちろん以前より山岳関係者などから、海の日が新設されたという影響もあってか、山の日の制定を望む声は高く、多くの国会議員を動かす形となっていましたから、要するに単に山の日という名称の祝日を、8月11日にあてがったということです。

逆に、8月11日を祝日にするために、その名称を、由来が何もないにもかかわらず、制定の要望が強かった山の日にしたと言えなくもありません。

山の日は固定した日

ではなぜ8月12日ではないのでしょうか。お盆休みと絡めたいなら、8月13日の前日である8月12日とするべきです。わざわざ飛び石にする必要は、本来はありません。

実は山の日は、一度8月12日ということで山の日制定議員連盟の総会で採択されました。しかしそれを敢えて覆したのには理由があるのです。

8月12日は、520名という世界史上最悪の死者数を出した航空事故の、日本航空123便墜落事故のあった日なのです。昭和60(1985)年の出来事です。30年以上も前の話になりますが、決して風化させてはいけない大惨事です。

群馬県の御巣鷹山おすたかやまに旅客機が墜落した日を、の日にすることに違和感を覚えた群馬県選出の国会議員や県知事らが日にちの見直しを強く訴え、その結果一日前倒しとなったのです。

そんなことなら初めから6月にしておけばよかったのにという意見もあろうかと思いますが、6月はジメジメとした梅雨の時期で、恐らく爽快な山登りのイメージには時期尚早ということで採用されなかったのだと思います。

7月の海の日の翌日というのも、不採用の真相は分かりませんが、海と山という対になったものの単なる羅列というだけの、あまりにも浅はかな発想に思えます。

このように紆余曲折して決まった山の日は、お盆休みと紐付けられながらもお盆休みと連続してある訳でもなく、しかも由来も何もないのに8月11日に固定されています。

ただし令和2(2020)年に限っては、「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」によって、東京オリンピックの閉会式の翌日に当たる8月10日に変更されます。

余談ながらこの特措法の名称は、令和になった今でも”平成三十二年”というのが正式名称です。法律や政令においては、改元のみを理由で改正はしないとの申し合わせがなされているそうです。

山の日はハッピーマンデーにできない

平成10(1998)年の「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」が制定されて以降、いわゆるハッピーマンデー制度が導入され、現在まで四つの祝日がその対象となっています。

しかし四つのうち敬老の日を除く三つ、すなわち成人の日、海の日、体育の日は、歴史的経緯によって制定された日付の正当な由来があったにもかかわらず、まったく関係のない日付に移動してしまいました。

ところが山の日は、最新の祝日であってその日付における山との関連なども一切なく、ハッピーマンデーにするには最も相応しい祝日のはずなのに、施行されて4回目を迎える今になっても、そういった機運が一向にあがってきません。

その理由は、結局のところ前述した航空機墜落事故のあった日との重複を避けるためだと言われています。なぜならば、お盆休み前の月曜日を祝日とすれば、いずれかの年には8月12日に該当してしまうことが必然だからです。

歴史的意義を喪失させてまで作り出されたハッピーマンデー制度なので、昨今ではこの制度に対する批判や否定的意見が多くなってきています。それでいて歴史的意義のまったくない山の日をハッピーマンデーにできないのは、とても矛盾したところだと思います。

おわりに

祝日には本来、その日が祝日である深い意味があったものでした。山の日にも山の日としての意義が法律には明記されていますが、8月11日でなければならない理由はどこにもありません。

休日が増えること自体に異議を唱えるつもりはまったくなく、大変喜ばしいことだと思っていますが、祝日として制定する以上、その名称や日付や歴史的背景には慎重になってもらいたいものです。

祝日とは本来、国旗を掲げてその日の行事をお祝いする日であり、単に個人的な余暇を楽しむためだけの日ではないはずなのですから。

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