立春。二十四節気の初め。なぜ春なのに寒い冬?立てるのは他になに?

立春(りっしゅん)とは二十四節気(にじゅうしせっき)の一番初めの節気で、2月4日頃のその日のことを表したり、次の節気である雨水(うすい)までの概ね15日の期間のことを意味したりもします。因みに天文学的には、その日になった瞬間を指します。

旧暦ではこの日が一年の始まりの日とされていました。旧暦の1月1日(旧正月)に非常に近い日であったため、立春も正月のように新年の幕開けとしてお祝いしました。

現在でも年賀状などに、春でもないのに「頌春」とか「迎春」とか「初春」とか書くのは、まさにその名残と言えましょう。

ただし、旧正月イコール立春ではありませんので、そのことはどうかお間違えのないようにお気を付け下さい。

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目次

二十四節気とは

二十四節気とは、戦国時代の頃の中国で考案された、太陽の黄道(こうどう)上の動きを視黄経の15度ごとに24等分して約15日ごとに分けた季節のことです。

当時の中国では、月の満ち欠けに基づいた太陰暦が使われていましたが、太陰暦は太陽の位置と無関係なため、農作業などでは春夏秋冬の季節を正しく知る必要がありました。それで、太陽の動きと密接な関係を持つ二十四節気が中国の中原地方で考案されたのです。

そして、これが江戸時代になって、日本の暦にも使われる様になりました。ただし中国の中原と日本とでは緯度も経度も違いますから、日本で実感する季節感とは合わない名称や時期も二十四節気の中にはあります。

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心の春は寒い冬に訪れる

立春というからにはその日になったと同時にポカポカ陽気の春がやってくるような気にもさせられますが、実際はそうではありません。

あくまで戦国時代の中国で考案されたものです。実際中国内陸部では、大陸性気候のために、この時期気温が上がり始めています。しかし海に囲まれた日本列島では上昇時期がずれ込み、立春の頃には逆に寒さの真只中となる場合が多いのです。

そもそも実際の気象的事象を検証して立春が定められたのではありません。太陽黄道を用いて季節を春夏秋冬の4つに区分し、始まりは春とすると定義したに過ぎません。

だから立春の日は、少なくともここ日本においては、寒い寒い冬の日なのです。

ただ、ひとつ思い出して欲しいことは、旧暦を適用すれば、立春は旧正月の時期と重なり、一年の始まりとして非常にめでたい季節の幕開け日となります。

そのような祝賀すべき日を、春以外のどの季節とイメージを一致させることができるでしょうか。春を置いて他にはないはずです。

春を立てる

ところで立春は、春が立つ日と説明しているものをやたらと目にしますが、それはとんでもない間違いです。それでは文法的におかしいのです。春が立つのなら、「春立」と言わなければいけないのです。

立春は春が立つのではなく、春を立てるのです。立春と言うからには、「立」は目的語を持つ他動詞でなければなりません。では誰が春を立てるのでしょうか。

もう一度思い出して下さい。二十四節気が考案されたのは、中国で、特に戦国の時代です。中国は覇王の国です。権力の座に就いた者の決めることこそが全てです。

だから春を立てるのは覇王です。春に限らず、夏秋冬全て、自然現象であるはずの季節でさえそれを始めるのは権力を握った者なのです。

実際は季節など自分で勝手にやってきますが、いかにも中国的な考えの命名であることが、この短い言葉から垣間見えるのです。

立春に他に立てるもの

立春の日には、他に立てることができるものがあります。この場合、権力者でなくても、ごく普通の人でも立てることができます。

それはです。70年ちょっと前、中国で立春の日に卵を立てた人物が現れたということで、ちょっとした騒ぎとなり、立春の日には、何か特別な力が作用するのではないかとか言われたりして、世界各地で取り上げられました。

卵の表面には無数の凹凸があって、その3~4点がうまく下地に接すると立たせることができます。だから本当は立春でなくても、やろうと思えば誰でもいつでも立たせることができるのですが、ほんの70数年前ですら、丸い卵など立つはずがないと思われていました。それで「立春の卵」として有名になったのです。

おわりに

閏月で調整する旧暦の一年の数え方に、一年を単純に24で割った節気を組み合わせれば、そのローテーションには、当然のことながらズレが生じてきます。

立春においては、旧正月を境にして、前になったり後になったりします。立春は二十四節気においての始まりで、特に重要視されていますので、旧正月前の立春を年内立春(ねんないりっしゅん)、旧正月後の立春を新年立春(しんねんりっしゅん)と呼んで区別します。

更に旧正月丁度、つまり旧暦1月1日に当てはまった場合は朔旦立春(さくたんりっしゅん)と呼び、非常に縁起のよい日とされました。

年内立春の場合、年末なのに新たな始まりを迎えることになり、それまでの一年間のことを、去年と呼んでいいのか、今年と呼んでいいのか、どちらか分からないという、洒落にもならない現象が生じてしまいます。要注意です。

逆に立春が一度も無い年も生じることになります。この立春のない年を盲年(もうねん)と呼び、祝い事には不向きとされています。こちらも気を付けて下さい。

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