「啓蟄(けいちつ)」は「立春(りっしゅん)」から始まる「二十四節気(にじゅうしせっき)」の三番目の節気です。一般的には第二節気である「雨水(うすい)」が終わる次の日、即ち3月6日頃を指します。
また次の節気である「春分(しゅんぶん)」までの約15日間の期間を指す場合もありますし、天文学的には啓蟄になったその瞬間を意味します。
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啓蟄は春の季語
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啓蟄ってちょっと難しい漢字ですよね。特に蟄という字は、日常生活ではまずお目に掛かることのない漢字です。一文字ずつ意味を紐解いてみましょう。
まず啓蟄の啓ですが、この字にはどうやら何かを「開く」という意味があるそうです。そして啓蟄の蟄のほうですが、この日頃馴染みのない文字には「土中に隠れて冬ごもりしている虫」という、とても奥深い意味があるのだそうです。
つまり、この二文字を足して即ち啓蟄とは、冬眠していた虫が、春の訪れを感じて土中や穴から出てきて活動を始める頃、という意味合いになります。
そして文字の上では虫のことのみ言っていますが、もちろん虫に限らず、哺乳類以外のありとあらゆる生き物に該当することは間違いないでしょう。
そんなウキウキ感満載の啓蟄は、春を表す季語としても使われています。実際の季節感と比較すると若干ズレているかも知れませんが、むしろ少し早いくらいの方が、準備段階を経られると思えばしめたものではありませんか。
啓蟄の行事
冬の間、著名な場所の松林において、地上2メートル程の高さのところに藁で作った筵(むしろ)を巻き付けている松の幹の姿を見たことはないでしょうか。
この藁の筵のことを菰(こも)と言い、松の木に巻き付けることを「菰巻き(こもまき)」と言って、11月頃から作業が始まります。
これは江戸時代から伝わる害虫駆除の方法で、マツカレハの幼虫を菰の中で越冬させ、春先に菰を取り外して焼却処理し、害虫を一網打尽にするのですが、この「菰外し(こもはずし)」は啓蟄に行うものとされています。
啓蟄が過ぎてからでは虫たちが自分で起きて勝手に菰の中から出て行ってしまいますからね。ただし、この菰巻きについては、実際のところは害虫駆除の効果はなしと、現在では結論付けられているみたいです。それでこの光景が年々見られなくなっていくとすれば、何だか寂しいことですね。
本場中国と唯一表記が異なる啓蟄
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二十四節気は中国発祥の、太陽の動きを基にして考え出された季節の区分手法で、その名の通り24の節気に分かれています。
そのうち23の節気は日本と中国での名称が同じなのですが、実は唯一この啓蟄のみが、異なる文字を使用しています。つまり、啓蟄というのは日本独自の言い回しです。
では中国ではどうかいうと、ビックリギョウテン、驚蟄と書きます。別に仰天する程のことでもありませんが、驚くという字を当てて、驚蟄と書くのだそうです。
この相違が生じた経緯については非常に込み入っているので、詳細は割愛しますが、どちらが正しくてどちらが間違いということはないのだけは確かなようです。
日本でも驚蟄を使わないことはないが、公式には啓蟄を使っているという程度の理解でいいと思います。
おわりに
啓蟄の 蟻が早引く 地虫かな
啓蟄や 日はふりそゝぐ 矢の如く
高浜虚子
啓蟄という言葉一つを知っただけで、何だか心がウキウキしてきて、とても知的になった気分です。
ミラクルワード、KEICHITSU!