節分(せつぶん、せちぶん)には、実は3つの使われ方があります。
1つ目は文字通り、季節を分けるというところから、二十四節気の中の季節の変わり目である立春・立夏・立秋・立冬の前日を意味します。即ちこの場合、節分は年に4回あります。
4つの節分の中でも、旧暦においては正月と時期が重なる立春が次第に最も重要視されていくようになり、江戸時代以降は節分と言えば立春の前日の節分を特に指すようになりました。これが2つ目の使われ方です。
そして3つ目は、一般に9つあると言われる雑節のうちの1つを指して言う場合です。雑節とは、季節の移り変わりをより的確に把握するために設けられた、特別な暦日のことで、日本独特の考えによるものです。
おさらいすると、四季の変わり目に訪れる4回の節分と、立春の前日の節分、そして雑節の1つである節分の3通りです。
目次
鬼は外、福は内
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節分と言って真っ先に思い浮かぶのは、やはり豆まきではないでしょうか。鬼は外、福は内と威勢よく声を出しながら家の内外に豆を撒き散らかす、あの豆まきです。
でもどうして豆を撒くのか、そしてそもそもどうして鬼などという恐ろしいものがこの舞台に登場しなければならないのか、冷静に考えてみたことはあるでしょうか。
冒頭でも申し上げましたが、本来、節分とは季節を分けるという意味で年に4回あるのですが、その中でも旧暦で新年の始まりと重なることの多い立春の前日の節分が重要視されるようになりました。
つまり年越しの日となる節分の夜は、一年を通して物事の秩序が陰から陽へと最も変わる日とされ、こうした季節の変わり目には邪気(鬼)が生じると考えられ、それを追い払うための悪霊払いが必要とされました。豆まきは、まさにそのための行事なのです。
穀物である豆には、生命力と魔除けの呪力が備わっていて、「豆」は「魔目」であり「魔滅」でもあり、鬼の目に投げつけて鬼を滅することができます。
よって鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いがあるのです。
豆まきの豆
ところで節分に因んだ童謡があって、幼い頃に聞いたり歌ったりした覚えもあろうかと思います。その題名はややひねくれており、なぜか「節分」ではなく、「まめまき」といいます。
鬼は外、福は内 パラッ、パラッ、パラッ、パラッ、豆の音 鬼はこっそり逃げて行く(^^♪
鬼は外、福は内 パラッ、パラッ、パラッ、パラッ、豆の音 早くお入り福の神(^^♪
このように、節分という本筋を押しのけて、歌のタイトルにまでなっている豆まきですが、豆まきに用いられる豆は炒り豆でなくてはいけません。
生の豆を使うと、豆まきした後に回収し損ねた豆から芽が出てしまって、それは縁起が悪いとされています。一方で、豆を「炒る」ことは、魔目を「射る」ことであり、魔目を射って魔滅となるわけです。
普通、節分用に市販されている大豆は炒ってあるはずですが、購入時には念のためご確認下さい。
豆まき後の豆
豆まきが終わったら、衛生面においても道徳面においても、撒いた豆を回収しなければなりません。何より豆にはまだ重要な役割が残されています。
豆は豆まきに参加した人達によって食べられなければいけません。それは、一年の厄除けを願うためです。食べる豆の数は決まっています。
普通は旧暦や数え年の観念から、「年取り豆」と言って自分の年齢よりも一つだけ余分に食べることが多いのですが、地方によってはその限りではなく、ひとつではなくふたつ余分に食べるだとか、満年齢の数のまま食べるなど、差があります。
数が多くて豆が食べきれない場合には、福茶を飲む方法で代用しても構いません
豆以外の節分必需品
厄払いに用いられるのは豆だけではありません。昔から臭いのきついものや、尖ったものも厄払いに用いられてきました。
そうしたことから、鬼の嫌いなものは「鰯(いわし)の臭い」と「柊(ひいらぎ)のトゲ」とされ、焼いた鰯の頭を柊の枝に刺したものを家の戸口に置いて鬼の侵入を防ぎました。
この鰯の頭の刺さった柊の枝を「焼嗅(やいかがし)」といいます。柊鰯、鰯柊と呼ぶこともあります。焼嗅は、鰯を戸口で焼いて臭いをかがせることを示す場合もあります。
柊は木へんに冬と書きますが、文字通り、冬の寒気の象徴であり、冬から春へと変わる節分で重用される意味はここにあります。
節分料理
こうしたことから、節分には鰯料理を食べるという家庭もまだまだ多いとは思いますが、最近では焼嗅を玄関先に取りつける家などほとんど見受けられなくなりました。
むしろ近年の傾向、というよりはむしろ流行りとして、恵方巻なるものを節分に食する機会が大幅に増えたのではないでしょうか。
おわりに
鬼は外、福は内と、大音声で威勢よく鬼に豆をぶつける豆まきですが、例外もありますので気を付けて下さい。
たとえば鬼を祭神であるとか神の使いとしている神社では、鬼は外ではなく、鬼は内といいます。
かつての藩主の氏名に「鬼」の一文字が入った領地では、お殿様に失礼のないようにと、そして今でもその名残として、福は内、鬼も内と言っています。
自分自身の氏名に「鬼」の字がある家庭であったり、そういう人の多い地域でも、やはり「鬼は外」は禁句です。そして見落としがちなのがニワの2文字。
貴方の身の回りに鬼頭さん、鬼塚さん、九鬼さん、はたまた丹羽さんといったような人がいたら、節分の時、くれぐれも失礼のないように注意して下さい。
さもなくば例外どころか、取り返しのつかない、非常に深刻な事態にもなりかねませんから。