お水送りという神秘的奇祭あり。毎年3月2日は若狭神宮寺に注目せよ!

福井県小浜市に神宮寺じんぐうじと言う天台宗の寺院があります。通称を若狭神宮寺わかさじんぐうじと言います。若狭観音霊場 (若狭三十三ヶ所霊場)の、第16番霊場でもあります。

若狭神宮寺は、奈良時代の和銅7(714)年、元正天皇げんしょうてんのう(第44代天皇)の勅願により若狭国の一宮である若狭彦神社の神願寺として開創されたと伝えられている程の古刹です。

そして何よりも、毎年3月2日に東大寺とうだいじ二月堂へのお水送りおみずおくりが行われる寺として知られています。

スポンサーリンク

なぜ水を送る?

東大寺とは、奈良の大仏で有名な、あの東大寺です。なぜ日本海に面する福井県の小浜市から、紀伊半島の内陸部にある奈良県奈良市の東大寺まで、はるばる水を送るのでしょうか。

毎年3月1日から3月14日までの2週間、東大寺では修二会しゅにえが行われます。修二会とは仏教寺院で行われる法会、つまり仏法を説いたり供養を行ったりする僧侶や檀信徒の集まりの大規模なもので、日本全国どこの寺院でも行われていますが、歴史的な背景から奈良の古寺で行われるものが、今でも著名です。

その中でも東大寺のものは一際有名で、お水取りおみずとりの通称で広く知られています。実際には修二会の最後の儀式としてお水取りがあり、3月13日の午前1時に開始されます。

二月堂のすぐ側の、丘の下にある閼伽井屋あかいやという建物の内側にある井戸から御香水おこうすいを汲み上げ、仏前にその水をお供えするという儀式です。

この御香水は不老長生と繁栄をもたらすとても有難い水とされ、二月堂受納所で随時有料で授与されるため、多くの参拝者がこれを求めて集まります。

なお、閼伽井屋は神聖な空間として一般の人の立ち入りは固く禁じられていて、お水取りの儀式についても、練行衆以外は一切立ち入ることができないため、実際にその儀式が行われる様子だとか、井戸の形などを観光客が知ることは一切できません。

その神聖な井戸は、若狭井わかさいと称します。その名が示す通り、このお水取りの由緒は、若狭国わかさのくに、つまり現在の福井県と大いに関係があります。要するに、この若狭井の御香水は、若狭国から送られているという訳です。

どんな水を送る?

スポンサーリンク

昔々、東大寺二月堂の修二会で全国の神様が召喚されました。ところが若狭の遠敷明神おにゅうみょうじんは、丁度魚採りに夢中になっていたため、その修二会に遅刻してしまいました。

そのお詫びとして遠敷明神は、二月堂の本尊にお供えする水を、若狭から送って二月堂のほとりに水を湧き出させると約束しました。それが若狭井です。

遠敷明神をまつるのが若狭神宮寺です。それで毎年3月2日には、若狭井に水を送る神事が行われるのです。10日ほどかけてこの若狭井に神聖な水が到着するとされています。そのお水をお水取りの儀式ですくい上げるという伝統が、奈良の時代より連綿と続けられています。

どこの水を送る?

お水送りの水は、若狭神宮寺にある閼伽井あかいで汲み上げられた水です。その聖水は、東大寺の修二会の時と同様に大松明で清める壮麗な儀式を経た後、傍らを流れる遠敷川おにゅうがわに沿って、1.5kmほど上流の鵜の瀬うのせという川淵へと運ばれていきます。

その時の聖水を送る行列は、先頭に大松明を掲げ、その後ろに何百もの松明が続いて、深閑とした漆黒の闇の谷間に、幻想的で神秘的な光景を描き出す光景は圧巻の一言に尽きます。

そして、鵜の瀬に到着すると、ここで再び大きな篝火が焚かれて、清められた後、聖水は、厳かな深淵へと注がれていきます。この鵜の瀬と、東大寺の若狭井が地下で通じているとされているからです。この鵜の瀬から注ぎ込まれた聖水が10日あまりの後に奈良東大寺二月堂の若狭井に達して、ありがたい聖水として汲み上げられるのです。

鵜の瀬は、鵜の瀬公園の中にあります。鵜の瀬公園は、鄙びてはいますが、きちんと整備された綺麗な公園です。鵜の瀬の水は、環境省の定める名水百選めいすいひゃくせんのひとつとして選ばれています。夏ならば川で水遊びもできます。名水と戯れられるなんて、最高に贅沢な避暑地ではないでしょうか。

おわりに

お水送りの一連の神事は3月2日午前11時開始。午後1時からは神宮寺境内において弓打神事がありますが、紫の装束に身を包んだ氏子代表が古式ゆかしく、30メートルほど離れた的に向けて弓を放ちます。午後5時半ごろ、白装束の僧が法螺貝を吹きながら山門をくぐって入場してきます。

午後6時からお堂で修二会が営まれます。その時7メートルはあると思われる大松明に火が灯され、それが掛け声とともに振り回されるのです。そしていよいよ大護摩にも火が灯された瞬間、辺りはまるで水面に炎が燃え広がったような幻想的な光景になります。

この歴史的な舞台は、公共交通機関利用で、JR小浜線東小浜駅下車徒歩45分、JRバス若江線遠敷バス停下車徒歩38分(当日最寄り駅より臨時送迎バス等有)、自家用車利用で舞鶴若狭自動車道小浜ICから約10分です。ぜひこの神秘的に燃え盛る炎を、貴方の目にも焼き付けて下さい

スポンサーリンク